修羅の覚悟

体が不自由になった老人たちが「一身独立」の人間として最後まで生きるためには、意欲をもちつづけられるような条件をつくることです。


それは、時に「冷たいくらいでなければ人は親切でない」という逆説を、配慮のいき届いた「補完」行政で実証することではないでしょうか。


なにからなにまで面倒みているようで、実は最も非人間的な管理をしている施設福祉の現場を「ホーム」(家庭)とよぶのはあまりにも無惨です。


老人たちから自立への意欲を奪い、あるいはその意欲を捨て去ることなしに「ホーム」へ入所できない福祉行政の現実をどのように改革できるか・・・


そこに自治行御曲政と住民との関係を考える最もさし迫った今日的課題の一つがあるといえるでしょう。


修羅といえば「常に戦い・争いの行われる悲惨な場」のことです。


やや誇張していえば、いま、わたしたちが急速に入っていこうとしている高齢社会における施設でも在宅でも、福祉の現場は修羅に近いものになる可能性があるように思われます。


・・・それは、福祉の現場を人間的なものにしようとすればするほど、そうなるという逆説的な事態の招来です。


なぜか・・・・?


この点を次に考えてみたいのです。

水域生産における得失 2

Ryder(1965)は北米の天然湖沼における漁獲量の推定に整然とした直線的な指数を開発しましたが、これはアメリカの貯水池の漁獲や釣りによる収獲の予測に適用できることがわかりました。


溶解固形物総量を平均深度で割ったこの指数は、37の水力発電用の貯水池では、現存量の変動の62%を説明でき、103の貯水池では、魚釣りの収量の変動の28%を説明できました。


Regierらは、アフリカの天然湖沼や貯水池における経済魚の潜在的収量の評価に、こういった形態土壌指数を、最近適用しています。


流域における土地利用の変化は、人造湖創設には不可避的に伴うものです。


貯水地域からの陸域生産の大半の消滅に加えて、陸域利用と水域利用の間のたくさんの生物的相互作用が発達することがあります。


水文学的には、貯水池は運搬されてきた堆積物の溜り場所であり、また、それよりも程度は低いが、支流の河川水中に溶解している栄養分の溜り揚所でもあります。


水源地域における林業と農業の経営は、このようにして水域生産に影響します。


逆に、たとえば水生の病原菌媒介者や有害水生植物を防御する場合のように、水域生産の一部を管理するために、化学薬品が使用される場合には、魚に対してだけでなく、水を家庭で消費する場合にも、下流で灌概をうける作物の場合にも影響が加わるのです。


湖盆における不注意な土地管理は、土壌浸食を促進し、それによって人造湖の埋積をはやめます。


また、他方では堆砂と濁度の増大により、水域生産を妨げるでしょう。


こういった種類の影響は、ダムが建設される以前に、土地と水の利用パターンを予測しようとする試みによって予想すべきであり、またダム建設後には、モニタリングを行なうべきです。

水域生産における得失

水生生物資源の人間による利用の全体像を考える程度にまで、潜在的影響に関する調査を実施することが望ましいでしょう。


貯水池の湛水以前の流水漁業の現在の価値については、政府統計により、優れた数値が得られることが多いのです。


統計値が得られない場合には、予備調査の一部として、実態調査を実施すべきです。


この調査は、将来の貯水池の漁業生産の広範な推定価値を得るためのデータ収集にも有益です。


多くの河川では、生産量の実際上および潜在的の価値を評価することは、比較的容易ではありますが、大きな静水貯水池からの生産量の予測技術は、まだ完壁とはいい難いものです。


この予測はある地域では、つぎの2つの方法により、実際に成功を収めています。


a)建設される貯水池に類似していると判断される既存の水体における既知の魚獲量との比較。


b)人造湖とその周辺の、いくつかの物理的、化学的特徴に基づいた形態土壌指数や重回帰分析の適用と、一次、二次生産量と現存量の予備評価。


・・・この2方法の中のb)は、漁業の経済的、社会的価値が適切に評価されたならば、精度に関して最大の希望がもたれます。

人造湖と水域生態系 4

自然研究、観光、レクリエーション、および自給菜園、住居の建造、工芸品などの原料として利用される、人に管理されない天然生産物の現在および将来の価値を算出するのは、もっと難しいのです。


既知の技術の適用にょって得られる潜在的生産や、将来可能になる技術の理論的適用によって得られる潜在的生産物の価値評価は、さらに難しいです。


もし評価できても精度が低いでしょう。


以前の河川流域で行なわれていたのとは別な種類の農業に適する地域が、水位変動地帯や、それに直接隣接する土地では最高の価値をもちます。


現在までの大半の熱帯の人造湖にとって、この種の潜在価値の評価は不適切です。


・・・これと同様な考察は水域生産にも適用されます。


河川の実際上および潜在的な生産の消失は、新しい人造湖の生産から期待される利益と比較されます。


水域生産物でいちばんはっきりしているのは魚類ですが、そのほかに水生植物、甲殻類や軟体動物、両生類、爬虫類(アリゲーターやクロコダイル)、鳥類(留鳥、渡り鳥、海鳥)、哺乳類(海狸、カワウン、藻類などもふくまれます。


これらの生物種のあるものについては、人びとは利用のしかたを覚えていますが、多くのものについては、まだ未利用の状態です。

人造湖と水域生態系 3

一般に、魚から哺乳類にいたる脊椎動物や、高等植物はよく知られているか、よく知られていなくても、どちらかというと調査しやすいものです。


微生物は、藻類のような植物にしても、原生動物や線虫のような土壌微生物にしても、椀脚類訳注)のようなプランクトンにしても、よく知られていませんし、種の段階まで同定するのは容易でないのです。


これらの生物は、生態系のダイナミックスにおいて重要な役割を演じているので、その系統分類や生物学的性質についてもっと知識をもつことが大いに必要とされます。


同時にこれらの微生物は、いっしょになって生態学的に驚くべき物ごとをなしとげる大きなグループとして取り扱われており、われわれは、彼らがその仕事をつづけることを望んでいるのです。


貯水による陸域生産の得失生態系の変化をもたらす開発計画に、通常適用される費用・・・便益分析における、持続的な不足額の一つは、この計画を企画しなかった場合の、実際上および潜在的な便益です。


この中には、計画が企画された場合に、失われる生物生産の構成要素の評価がふくまれます。


貯水される土地からの陸域生産の消失は、見逃されることが多いのです。


陸域生産は、野生の動植物に(それらが有用とみなされる場合には)集約されます。


しかし、それらは天然物のこともありますし、農作物、畜産物、林産物をもたらす、人間に管理された生産のこともあります。


相対的な精度で、現在の生産の価値が見積もられるでしょう。

人造湖と水域生態系 2

予備調査の段階では、いろいろな種類の陸生・水生生物に及ぼす、提案された環境操作の影響を予測するのが課題です。


これらの生物にはつぎのものがあります。


すなわち、生存期間が短く、個体数の回転率の速いもの(たとえば、栄養循環細菌や多くの藻類)、生存期間も回転率も中間のもの(たとえば、穀類作物、ある種の小魚、蚊のような昆虫など)、生存期間が長く、個体数の回転率も遅いもの(たとえば、森林の樹木のような永年性植物、大型の水生・陸生野生動物、家畜)および人類です。


これらの影響を予測するためには、影響をうける陸域および水域環境を構成する種と群集を知ることが重要です。


それから植物と動物は、その実際的および潜在的な用途に応じて分析することができます。


人類および人類が飼育する動物や栽培する植物に害や脅威を与えたり、与えるかもしれない生物は、とくにその数や分布を変えられるかどうかについて評価されるでしょう。


人造湖予定地に稀産種や絶滅しつつある種およびそれらの群集の全体ないし一部が含まれる場合には、それらの損失を防ぐ費用も、事業化可能性の決定条件に入ってきます。


上述のことは、生物学者が、貯水によって影響されることになる生物について、事前の知識をもっていることを前提としていますが、不幸にもこういう場合はめったにありません。

人造湖と水域生態系

相互に関連しあった過程の研究は、水域生態系の研究の中心テーマではありますが、自然環境においてさえ、いろいろな生物種の生産量や個体数に影響する因子を適切に洞察できる状況ではまだありません。


つまり、貯水池での諸効果を予測するためのわれわれのよりどころの大半は、知識ではなく、経験に根ざしたものです。


幸いなことに、大半の生態系では、エネルギーの流れの大部分は、動植物種の全数のうち、比較的小部分の間で働いています。


さらに、これらの生態学的に優占的な型は、かなり別々の群集に分類されます。


このように、生態系の複雑さはひじょうに大きいのですが、栄養段階別の生産量や現存量のような主要な特徴は、それらが存在するからには、かなり簡単に評価することができます。


優占種のダイナミックスの研究がすすめば、比較的表面的な評価でも、広範な管理技術に対して、よい導きになりえます。


もちろんこういう技術は、温帯の水域生態系でもっとも発展してきたものです。


熱帯環境における種の多様性と、研究者が少ないことが、熱帯生態系の理解を妨げつづけています。

人造湖とは? 2

3)水位低下帯や、湖の影響をうける隣接陸地に新しくできた生息地から得られる農産物と畜産物の収量はどのくらいか。


生物系の相互関係叙述を簡単にし、生産の変化のダイナミックな性格を強調するために、われわれは、新しい人造湖の生活史を4段階に区分してみましました。


第1段階 人造湖計画の生態学的、経済的、社会的、政治的可能性決定の段階。


第2段階 計画が可能と決定されたら、建設と、それに関連する社会的移動の実施計画と、必要な諸調査の実施段階。


第3段階 貯水池がはじめて湛水された時期から、湖が生物学的にきわめて不安定な時期にひきつづく段階。


第4段階 湖が安定化したと考えられる時期から、それにひきつづく多かれ少かれ、長くつづく発展の段階。


・・・われわれはこの各段階の中で、政策決定に含まれる原則を与えるようないろいろな分析的、研究的、操作的な優先権を区別することができます。


われわれは各段階に、つぎの2つの方法を適用します。


1)構成する各システムの成分の同定と限定。


2)湖沼生態系を構成する各システム内、およびシステム間の全成分(ないしは少なくとも重要な成分)の相互関係やメカニズム。


たとえば生物系では、成分には生きた生物の種や群集ばかりでなく、各種の特殊な生活史の段階(生態相)も含まれると考えられます。


貯水池の発達の中でおこっているたくさんの変化の背後にある錯綜した原因について論ずることは、われわれの現在の知識の状態をこえています。

人造湖とは?

人造湖はふつう、人工的にもたらされた高い生産力から、比較的安定した、より低い生産力をもつ、期待される相に急速に発展します。


水質汚濁のような水質の変化によって掩乱されなければ、この後の発展は合理的に予測可能であって、実際には気候(緯度)に左右される緩慢な速度で一般に進展します。


この長期の発展の方向は、自然湖沼の場合とほぼ同様であって、究極的には人造湖は埋積され、陸上生産に戻ります。


ここでは詳細には取り扱わないですが、下流域では、水位変動の様式を変えるダム建設の影響は大きいのです。


氾濫原やそれに隣接する広大な地域は、アマゾン川中・下流や、パラナ盆地の場合のように、池と草原の景観から沼沢地に変化するように思われます。


陸域および水域の生物系の潜在的生産に及ぼす人造湖の効果についての評価は、主として予測と、天然湖と人造湖の比較に基づいてなされています。


予測や比較を行なう技術はまだレベルが低いですが、改良されつつあります。


必要な予測は、つぎのような問題から提起されます。


1)浸水により失われる実際および潜在的な陸上生産量(作物林産資源家畜生産)はどのくらいか。


生物系における生産量の変化と、他の系、とくに社会・文化系との短期間の相互作用はどのようでしょうか。


2)川、つまり人造湖の位置やその上・下流河口および隣接の海から失われた実際および潜在的な水域生産量(魚類およびその他の有用動植物)はどのくらいか。


貯水池やその上・下流で増加した水域生産量はどのくらいでしょうか。


静水を好む病気の媒介者や有害動植物の量や分布はどのくらいでしょう。


動植物の稀産種や、絶滅しそうな種のどんなものが失われるのでしょうか。

自然生態系の生産のしくみ 3

漁業管理に対して最大の助言をのべるなら、予測と漁獲技術の基礎になる新しいモデル・システムを導くような経験を身につけたいと願いながら、湖の中で何がおこっているかを証明することです。


現代の漁業資源管理では、そのための社会的、経済的条件をますます考慮するようになってきています。


多くの点で、「最大維持漁獲量」の原理は一つの神話になってきています。


・・・というのは、それは経済的でないことがあるからです。


人間関係にとって、もっと適切なのは「最大経済漁獲量」であり、もっとも適切なことは、特定目的のための社会的利益を最適化するような管理です。


このことは、貯水池や分水界の狭い境界を超越するたくさんの考慮を必要とすることはいうまでもないでしょう。


事実、貯水池は経済的、社会的意義の分析に対して、まちがった焦点を与えるかもしれないので、もっと理想的には、社会的・経済的目標に到達するための選択行為を考えながら、これらの目標を意識して、システムのモデル化を進めなければならないのです。


その選択行為とは、多くの可能な計画の中で、貯水池計画がただ一つのものになるような選択です。


いくつかの人造湖の初期の生物の繁栄は、水域環境の空間的拡大と、底泥や、水に沈んだ動植物の遺体からの養分の溶出に起因しています。

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